母の温もりを感じたFAX
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■40代女性Aさん
社会人になって一人暮らしをするようになったばかりの頃、とても貧しい時期がありました。たまには実家の母と連絡を取りたいけれど、母は携帯電話を持っていないので、メールもできません。電話は通話料がかかります。手紙は切手代がかかります。
そこで思いついたのがFAXです。ちょうど仕事の関係でFAXを持っていて、実家にもやはりFAXがあったのです。私は毎日の他愛もない出来事を書いては母親に送りました。絵を描くのが好きなので、イラストを添えて送りました。
すると、母からもメッセージやイラストFAXの返信がありました。メールは文字だけで味気ないですが、FAXは手書きなので、母の温もりが伝わってきました。
仕事で失敗して辛いことがあった時には母の似顔絵から吹き出しで「がんばれー」と書いてあるのを見て元気をもらいました。そのおかげで何とか乗り切ることができたのです。
その後、仕事は軌道に乗りましたが、しばらくして母は亡くなってしまいました。
先日、遺品整理をしていたら、あの時のFAXが出てきました。すっかり忘れていましたが、私は母から来たFAXをきちんとファイリングしてあったのです。
母の励ましがあったから、私の今があるのだと改めて思うと感謝しかありません。手書きのFAXにはメールとはまた違う温かさがあるように思うのです。